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変性ポバール

変性ポバールとは、一般ポバールの水酸基、酢酸基以外の官能基を有するポバールの総称です。JVPでは、カルボニル基を有するDポリマーとカルボキシル基を有するAポリマーを上市していますが、それ以外にも種々の変性ポバールをご用意しております。

易反応性PVA[Dポリマー]

Dポリマーは、水酸基・酢酸基以外の変性基として、反応性の高い“カルボニル基”を有するPVAです。カルボニル基はヒドラジド基やアミノ基と反応性があり、特にヒドラジド系架橋剤とは反応性が高く、熱水にも溶解しない塗膜・皮膜を形成でき、また、透明性の高いゲルを作製できます。

化学構造イメージ

グレードと品質規格

グレード DF-05 DF-10 DF-17 DF-20 DM-17 DM-20
けん化度 (mol%) 98~99 95.5~97.5
4%水溶液粘度 (mPa·s) 3~8 9.5~12.5 20~26 25.5~31.5 18~24 25~31
揮発分 (%) 6以下 3~6 6以下
酢酸ナトリウム (%) 1.5以下

特徴

  • Dポリマーは水溶性ポリマーであり、任意の比率で水に溶解します。
  • 水溶液は低温条件で長期間保管しても増粘しにくく、粘度安定性に優れます。
  • カルボニル基を分子内に有しており、化学反応性に富みます。
  • 水溶液の表面張力が低く、高い界面活性能を有します。

用途例

  • 架橋剤を併用した耐水性コーティング剤
  • 酢酸ビニル系エマルジョン用乳化剤
  • 耐水性接着剤・バインダー
  • 水性ゲル

Dポリマーの使用イメージ

Dポリマーの使用(概念図)
Dポリマーの使用(概念図)

架橋剤

Dポリマーのカルボニル基はヒドラジド基やアミノ基等と反応性を有するため、これらの官能基を分子内に複数有する化合物を架橋剤として使用できます。特に、ヒドラジド系架橋剤との反応性は高く、特別な熱処理を加えなくても室温で架橋させることが可能です。

架橋剤 耐水化効果 可使時間
アジピン酸ジヒドラジド(ADH) 約24時間
エチレンジアミン 7日以上

※DF-17 5% 水溶液 架橋剤使用量5%/PVA 20˚Cで保管時

架橋フィルムの耐水性

Dポリマーと架橋剤を併用すると熱水にも溶解しない耐水化フィルムを与えるため、感熱紙のオーバーコート層など耐水性が求められるコーティング剤として使用可能です。

フィルム作製条件

手順: PVA (+架橋剤) 水溶液を基材に流延し、20˚C、65%RH 条件下で48h乾燥 Dポリマー: DF-17
架橋剤: アジピン酸ジヒドラジド(ADH)
架橋剤添加量: 5%/Dポリマー

耐水性評価条件

手順: フィルムを30˚Cおよび95˚Cの水に浸漬した後、溶け残ったフィルムの重量から残存率を測定 浸漬温度・時間: 30 ˚C×24h または 95 ˚C×1h

Dポリマー+架橋剤水溶液の安定性

Dポリマーと架橋剤の反応性は高く、架橋剤添加後の水溶液は時間経過に伴いゲル化しますが、以下の添加剤を使用することにより、最終的な耐水化効果を阻害することなく可使時間を延長することが可能です。

架橋剤(%/PVA) 添加剤(%/PVA) 可使時間
アジピン酸ジヒドラジド イソプロパノールアミン アセトン
5 0 0 数時間
0 10 3日間
2 0 13日間
2 10 60日間

※DF-17 10% 水溶液 架橋剤添加量5%/PVA 20˚Cで保管時

なお、Dポリマーと架橋剤との反応は水溶液のpH、温度等により異なり、使用条件によって可使時間も変化します。

Dポリマーの表面張力

区分 Dポリマー 一般PVA
グレード DF-17 DM-17 JF-17 JM-17
けん化度 (mol%) 98.5 96.5 98.5 96.5
表面張力 (mN/m) 57 51 66 60

※測定法: 懸滴法 (ペンダント・ドロップ法), 濃度: 0.2%, 温度: 20˚C

アニオン変性PVA[Aポリマー]

Aポリマーは、水酸基・酢酸基以外の変性基として“カルボキシル基”を有する変性PVAです。
アニオン性官能基を有するため、一般PVAに比べて水溶性が高く、カルボキシル基による反応も利用可能です。

化学構造イメージ

グレードと品質規格

グレード AP-10 AP-17 ALT-17 AF-17 AHF-17
けん化度 (mol%) 88~90 87~90 91~93 96.5以上 93~96
4%水溶液粘度 (mPa·s) 9~12 23~31 20~30 27~33 27~31
揮発分 (%) 7以下 10以下
酢酸ナトリウム (%) 3以下 4以下

特徴

  • カルボキシル基を分子内に有しているため、一般PVAと比較して高い水溶性を示します。
  • カルボキシル基の化学反応を利用した耐水化も可能です。
  • 水溶液の泡立ちが抑えられます。
  • 水溶液は低温条件で長期間保管しても増粘しにくく、粘度安定性に優れます。
  • ポリエステル、金属との接着性に優れます。
  • 特定の金属塩(硫酸アルミニウム等)とコンプレックスを形成します。

用途

  • 水溶性フィルム
  • 架橋剤を併用した耐水性コーティング剤
  • 紙用サイジング剤

フィルムの水溶性

一般PVAに比べて水溶性が高いため、個包装洗剤用をはじめ各種水溶性フィルムとして利用可能です。

フィルム作製条件

手順: PVA水溶液を基材に流延し、20˚C、65%RH 条件下で48h乾燥

水溶性評価条件

手順: フィルムを水に浸漬し、溶解するまでの時間を計測 フィルム厚: 40μm
温度: 20 ˚C

架橋剤

架橋剤 耐水化効果 可使時間
ポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)樹脂 約48時間

※ALT-17 5% 水溶液 架橋剤添加量10%/PVA 20˚Cで保管時

架橋フィルムの耐水性

ポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)樹脂を架橋剤に用いると、熱水にも溶解しない耐水化皮膜を与えます。耐水性フィルムに適したグレードとして、新しく上市しました “ALT-17” を推奨しております。

フィルム作製条件

手順: PVA (+架橋剤) 水溶液を基材に流延し、20˚C、65%RH 条件下で48h乾燥後、更に65˚C で 3h 熱処理 Aポリマー: ALT-17
架橋剤: ポリアミドエピクロロヒドリン(PAE)樹脂
架橋剤添加量: 10%/Aポリマー

耐水性評価条件

手順: フィルムを30˚Cおよび95˚Cの水に浸漬した後、溶け残ったフィルムの重量から残存率を測定 浸漬温度・時間: 30 ˚C×24h または 95 ˚C×1h

その他の変性ポバール

JVPは以下のような特長ある変性PVAを開発しており、用途を探しております。お客様のニーズに合った商品に作り上げていきたいと考えています。ご興味があれば、ご連絡ください。

親水性PVA

非イオン性親水基によるPVAの親水性改良、柔軟性の付与。

疎水基変性PVA

長鎖アルキル基を有するPVA。低濃度でも粘度が高く、チクソトロピックな粘性を示す。

超水溶性PVA

従来のPVAよりも水溶性の高いPVA。

その他

PVAにこんな官能基を付与してほしいというお客様のニーズに誠実に対応したいと考えています。